さっきまでは、普通だったのに。
突然のことに私はなんだか呆然としたまま、立ち上がることもできなくて……。
「ご、ごめん……。私、なにか変なこと言ったかな?」
陸斗くんが怒ってしまったのかと思って、慌てて声で彼を追いかけた。
すると、一瞬こちらを見た彼に、理由もわからぬまま睨まれる。
……先生みたい、なんて。大袈裟なことを言う奴だと呆れられたんだろうか。
それとも何か、別のことで彼を嫌な気持ちにさせてしまったとか?
陸斗くんは視線を斜め下へと落として黙り込んでいる。
けれど一度だけ小さく息を吐き出すと、再び静かに口を開いた。
「……今日、アンタがこの間ここでやってた課題のノート、返ってきただろ」
「あ……うん」
「その時、担当の先生が、"次からはサボらず、期限通りに提出しろ。遅くまで学校に居残りさせたと親御さんに思われるのは、こっちなんだから"って言ってた」
「ああ……」
それは昼間、数学の先生から言われた言葉だった。