ふわふわと、風に揺れるアイボリーのカーテン。

今日も静かに鎮座するグランドピアノ。

それらを視界に捉えてから、私はそっと目を閉じる。

……朝陽も頑張ってるんだから、私も頑張ろう。


「……!」


その時、不意に足音が耳に届いて、私は閉じていた瞼を開けた。

何故か目の前には陸斗くんの足があり、思わず肩が飛び跳ねる。


「なんの課題やるんだよ」

「え……あっ!?」


言葉と同時に、ヒョイ、とペンが奪われた。

反射的に顔を上げれば、私から奪ったペンを器用に指先でクルクル廻す、陸斗くんの視線とぶつかる。


「ああ、現代文か」


言いながら、陸斗くんは何故か私の座っている机の前にしゃがみ込んだ。

思いの外、距離が近くて──。

……急に、どうしたの?

心臓が、ドキドキと警笛を鳴らすように高鳴りだした。


「これ、ここの部分、引っ掛け問題だぞ」


こうして改めて近くで見ると、長い睫毛だ。

シミひとつない肌と、綺麗な鼻筋。

ふわふわとした髪はなんだか少し、猫みたい。