『アンタがアンタなりに頑張ってるんだってことは、その指を見たらわかる』
そんなこと──今まで朝陽以外の人には一度も、言われたことがなかった。
別に、頑張ってると褒められたいわけではない。
認めてもらいたいと思っているわけでもないけれど……ただ、どうしようもなく、嬉しかった。
「……ありがとう」
ぽつりと溢すと、陸斗くんが驚いたように片眉を持ち上げる。
「……私ね。勉強に集中したいと思っても、良くて三十分が限界なんだ」
「三十分?」
「うん。気が付くと、何か別のことをやったり、全然関係ないものを探したりしちゃうの。テスト前とか受験のときも、そんな感じで……何度、自分で自分が嫌になったかわからない」
それが私の抱えるADHDの症状の一つなのだと病院の先生に諭されても、どうしても自分が許せなかった。
朝陽と、同じ学校に行きたい。
その目標を叶えるためには必死に勉強して朝陽の背中を追いかけなければいけないのに、すぐに脇見をして注意散漫になる自分が許せなかった。