「待ってよ、あさ──ひ、!?」

「く……っ、慌てすぎ」


けれど、音楽室を一歩出て、拍子抜けだ。

先に出ていた彼は扉のすぐ横の壁に背を預け、私のことを待ち受けていた。

さっさと、廊下を歩いていってしまっただろうと思っていたのに……。


「……ん」


当たり前のように、目の前に差しだされた手のひら。

反射的にその手を掴むと、今日も朝陽が綺麗なアーモンドアイを細めて笑った。


「帰ろう」


──私が世界で一番大好きな、朝陽の笑顔。

温かくて、優しい。

私の…… " 幼馴染 " である、朝陽の笑顔だ。