「……なんて。朝陽の優しさに散々甘えてる私が言っても、説得力ないけどね?」
最後は自嘲気味に笑ってから、再びノートへと視線を落とした。
私を見る陸斗くんの目が、気になって仕方がない。
バカなやつだと思っただろうか。
綺麗事ばかり言って、結局朝陽から離れられないくせにと、彼は今、思っているだろう。
本当は顔を上げたかったけれど、今は残り一問を解くのが先決だと自分自身に言い聞かせた。
集中、集中……と、心の中で唱えている時点で集中できていないんだけど、とにかく課題を終わらせないことには家にも帰れない。
別に居残りさせられてるわけではないから、家に帰ってもいいんだけど……。
私が自分で、課題が終わるまで帰らない!と勝手に決めただけだから。
「説得力ないとは、思わない」
「え?」
「……指。中指に、ペンだこ、できてるし」
突然、思いもよらない指摘をされて、顔を上げてしまった。