私は『落ち着きがない』とか『不真面目だ』とか。『やる気がない』とか、影で囁かれているのを知っている。
私がADHDであることを知っている先生ですら、どこか不審そうな目を向けてくることもあるくらいだ。
それらのことにももう随分慣れたけれど、自分でも時々、自分の"できない"部分にイライラして嫌気が差した。
いつもいつも、やらなきゃいけないことがあるのに、集中できない。
だけど不思議と……この、第三音楽室にいる時だけは、ひとつのことに集中できた。
ここが、防音室で外の世界と遮断されているということが、理由なのかもしれない。
いつもはできないことが、ここならできる。
だから私は、何かやり遂げなければならないことがあると必ず、この音楽室で机に向かった。
それこそが、私がこの場所を大切に思っている最大の理由だ。
朝陽のことだけじゃない。私にとって第三音楽室は、なくてはならない場所なのだ。
「……そんな課題、あの特進科の幼馴染に聞けば、一瞬で終わるだろ」
問題を途中まで解きかけたところで声を投げられて、私はノートに落としていた視線を上げた。