「あと二箇所やったら、終わりなの。それで、ノートを職員室に置いて、帰れるから」
途中まで解けかけていた一問の答えを書いて、残りはあと一箇所になった。
たった二十問の問いに答えるだけの課題だ。
けれど、私の苦手な数学の課題ということもあり、それなりに時間が必要だった。
「ほんとに、あと一問だから……」
言いながら、必死にノートにかじりつく。
必死に、なんて大袈裟な表現かもしれないけれど、私にとっては大袈裟でもなんでもない。
今のように一度集中力が切れてしまうと、周りにある、ありとあらゆるものが気になって、つい注意散漫になってしまうのだ。
いけないと思って再度机に向かうのだけれど、気が付いたら他のことを考えて上の空になっている。
家で課題をするときも、授業中だって先生の話を聞かずに周りの人を眺めてしまい、人の話を聞いていないと注意された。
それはADHDの症状の一つだと病院の先生は言っていたけれど、障がいのことを知らない人たちからは、現状、ほとんど理解は得られない。