「アンタ、いつまでそうしてるつもりだよ」


声の主は、陸斗くんだ。

視線の先には呆れたような表情で、私を見下ろす彼がいる。


「もう、運動部も部活終わって帰る時間だけど」


言われてみて時計を見れば、確かに時刻は十八時半を過ぎていた。

どうやら時間も忘れて、課題に集中していたらしい。

逆を言えば、それだけ時間が掛かってしまったということなのだけれど、かれこれ二時間くらい……机に向かっていたようだ。


「教えてくれて、ありがとう。でも、あと少しだから」

「は?」


答えてから、再びノートに視線を戻す。

今、ここでやめてしまうと、また課題のノートを家に忘れてしまうかもしれない。

いつも、そうなのだ。せっかく家で課題をやっても、学校に持ってくるのを忘れてしまう。

もちろん、忘れたくて忘れているわけではない。

自分で自分が信じられないけれど、気が付くと当然のように家に忘れて学校に来ているのだ。