ついチラリと視線だけを上げて彼を伺ってみたけれど、既に陸斗くんの目は窓の外へと向いている。
……もう、出て行けとは言わないのかな?
性格が悪い奴だと諦められた?
本当に、よくわからない人だ。
風のように自由で、つかめない。独特な空気を持っている人。
……いけない。
そこまで考えて、私は再び机の上へと意識を戻す。
私は課題をやるために、ここに来たんだ。
時折窓を揺らす、強い風。
小さく動くアイボリーのカーテン。
音楽室の真ん中に置かれたグランドピアノだけが、私達のことをひっそりと、見つめていた。
* * *
「……おい。聞こえてるのか?」
気が付くと、空は茜色に染まっていた。
私はノートに向かっていた顔を上げると、改めて自分を呼ぶ声に耳を澄ます。