「きょ、今日は、ここで課題をやろうと思って……。陸斗くんこそ、どうしてここのところ毎日、音楽室にいるの?」


負けじと尋ねれば、まじまじと見返される。

だけど、『どうして毎日、ここに来るのか』って、それはこっちの台詞なのだ。

陸斗くんが現れるより以前から、私はこの場所を朝陽との待ち合わせ場所に使っていた。


「最近まで使ってた理科準備室が、備品の交換作業とかで立入禁止になったんだよ。ご丁寧に鍵までかけられて、生徒は中に入れなくなった」

「そうなんだ……」

「だから、これからサボるときはどうしようかなーと思ってた。そしたら、この間の課外活動の授業のときに、偶然この第三音楽室を見つけた。使ってみたら居心地良いし、気に入ったんだけど……」


と、そこまで言って、陸斗くんは真っ直ぐに、私のことを指摘する。


「アンタが連日現れさえしなければ、この場所は最高に快適だよなぁって思ってるとこ」


あからさまにウザい、邪魔だから出てけと言われているようで、思わずムッとした。

私が来なければ快適って……第三音楽室を先に見つけて使っていたのは、私なのに。

どうして昨日今日で現れた陸斗くんに、文句を言われなきゃならないんだろう。