「あー、もう。せっかくいいところだったのに」
「はいはい、そうだな」
「朝陽も一度、やってみたらいいんだよ」
「わかったわかった」
「もー。ホントなんだから。今みたいに窓とカーテンにサンドイッチされるとね、ポカポカして、眠くなって最高なんだよ。ね、だから朝陽も一緒にやってみよう?」
「はいはい、やらないから」
再び呆れたような息を吐いた朝陽は、「帰るぞ」とお決まりの言葉を残して、さっさと【第三音楽室】を出て行こうとする。
私は大きなグランドピアノの前に置きっぱなしにしていた鞄を手に持つと、慌てて彼の背中を追い掛けた。