「両親がいなくなったのが、ちょうどこんな寒い冬の時期だった。だから冬になると余計に思い出して、雪が吹雪く中、会いたくて裸足で外に出たこともあった。そんなことを何回か繰り返して、ふたりのところに行きたいな、なんて思ってた時にこの奇病が発病したんだ」
俚斗の身体の中に潜む奇病。冷たくて体温を氷のように変化させる。
それはなぜなのか。どうしてなのか。
ずっと分からないことだらけだったけど、俚斗の過去を知って、バラバラだった欠片がひとつにまとまったような感覚がしてきた。
「これは俺の仮説だけど、そういう自分の気持ちに反映して身体の体質が変わったんじゃないかって思ってるんだ」
それは科学では説明できないことだけど、両親を想って真冬の外に飛び出した幼い日の俚斗が氷点下の中で感じた苦しさや痛さが雪と一緒に溶け込んで、彼が持っていた体温を奪ってしまったのかもしれない。
まるで雪女の伝説のようだと思った。
孤独で愛に飢えていた雪女の物語は、どれも悲しい。
だけどそれは雪が降っている場所だから雪女は冷たいんじゃなくて、雪女の人恋しい気持ちの形として身体が冷たくなってしまったのなら、なんて苦しい話なんだろう。
きっと、俚斗も愛に溢れていた場所から急にひとりぼっちになって、その悲しみが奇病という形になってしまった。
涙が、苦しさに引っ張られるように流れた。