「そういえば、今度、駅前の商店街にハンバーガーショップできるらしいぞ」

「え、そうなの。すごい!」

「最初は混みそうだよな。でもオープンは来年の3月末らしいから、高校三年の俺らには関係ないけど」



都会ならではの大型のショッピングモールや、オシャレなコーヒーショップ、流行りのデートスポットなんて、この街には一つもない。

駅前には寂れた商店街と、それなりの大きさのスーパー、極一般的なコンビニがあるだけだ。

中途半端な田舎街のこの場所から、駅で二駅も離れれば、視界には畑と田んぼが広がった。



「確かに、ハンバーガーショップができる頃にはカズくん、卒業だもんね。3月末には、もう大学の近くに引っ越してる?」

「まぁ、志望大学に無事に合格できればの話な」

「……それは、そうだけどさ」



思わず声が小さくなったのは、カズくんがこの街を出て行ってしまうという事実に寂しさを感じたからだ。

だけど、その頃には私ももう、この世界にはいないんだろう。

あと、4日。

駅前に新しくできるらしいハンバーガーショップには、私はとても行けそうもない。



「なぁ、ミウ、お前……今朝の話の続きだけどさ」



電車に乗って最寄りの駅で降り、駐輪場に停めてあった自転車にそれぞれ跨って、家までの道をくだらない話をしながら走った。

すると、家まであと数分というところの信号待ちで、唐突にカズくんが口を開いた。

不意をつかれたせいで、思わず固まったままカズくんを見れば、一瞬、難しそうな顔をしたカズくんと目が合う。