大好きな、私のお母さん。

今日まで、たった二人。幼い私の手を引いて、自分の全てを犠牲にしながら私に愛情を注いでくれた、お母さん。


「……お母さん、私、」

「うん?」


だからこそ、私は。これ以上、お母さんにワガママは言えないと思った。言えるわけもないと思った。

看護師になりたい。そのための学校に行きたい。

私がそう言えば、お母さんはまた自分を犠牲にして働き続けなければいけない。

私が夢を追い掛ければ追い掛けるほど、お母さんに苦労を掛けることになるんだ。

少しでもお母さんの力になりたいと思っているのなら、高校卒業と同時に働き始めた方がいい。

きっとそれが一番の親孝行になるはずで、そうすることでお母さんは、私という名の肩の荷を下ろすことができるんだから。


「どうしたの、ミウ?」

「……っ、」


だから─── 言えない。

私はもう、何も知らない子供じゃないから。

ただ、自分の夢を盲目に追いかけるばかりの子供じゃないから、現実を知っている私には、これ以上お母さんを困らせるようなこと、言えないんだ。