「俺は、何度も何度も、もう見たくない、もう辞めたいって父に言ったけど…… " お前が見るのをやめたら、俺たちは母さんのように死ぬしかないんだ " って、その度に、泣きながら、言われ続けた」



『未来が見えても、良いことなんて、ひとつもない』─── 屋上で、雨先輩が言った言葉の本当の意味を知る。

あの時、雨先輩はどんな気持ちで、その言葉を口にしたのだろう。

見たくないものばかり見て、本当に見たいはずのものは、何一つ見えなくて。

雨先輩は、ずっと暗闇の中を歩いてたんだ。

暗闇の中を、たった一人で。



「父に力を利用されている間、何度も何度も、もしかしたら、父が改心してくれるかもしれない。昔のように戻れるかもしれないって思ったよ」



期待して、裏切られて。それでも期待を捨てられずに、歩き続けてきた。



「だけど結局、その期待が報われることはなかった。そうやって一人になった俺を、母方のばあちゃんが家に来いって呼んでくれて今がある。それが、今年の夏の話。でも……そのあとすぐに、ばあちゃんも身体を悪くして入院したんだ」



やっと見えた光も、雨先輩をまた暗闇へと引き戻す。



「俺が、ばあちゃんの唯一の家族だからって病院に呼ばれて、お医者さんから色々と説明されて。それから……ああ、また結局、期待は裏切られるんだって思ったら、もう何もかもがどうでもよくなった」



どんなに手を伸ばしても、届かない光。

何もかもが嫌になって、ついに全てを諦めた頃。雨先輩は、あの日、屋上で───