「人の未来を見ることのできる、この特別な力のことを自分から話したのは、家族を除けば美雨が初めてだ」
「え……」
「美雨に出会って、美雨の未来を見て、美雨に触れて……俺の中で何かが変わった。臆病で、逃げてばかりの自分を変えてみたいって、そう思い始めるようになったんだ」
真っ直ぐに、向けられた目。
繋がれた手のぬくもりと言葉に、胸いっぱいに優しさが広がって、胸の奥が苦しくなった。
「美雨のために、何かしたい。美雨の未来を守りたいって、今は心の底からそう思うから、ここに来た」
ああ、きっと。雨先輩が、言った通り。
雨先輩と私は、よく似てる。
臆病で、現実から目を逸らして自分の殻の中に閉じ籠もり、手の平をすり抜けていくものを " 仕方のないこと " と諦めていた。
それは、そうすることでしか、守り方がわからなかったから。
自分自身を。そして、自分の周りにいる人たちを、そうすることでしか守れないと思っていたからだ。
だけど結局、いつまでもそうやって、殻の中に閉じ籠もり続けるわけにはいかないんだ。
いつか、殻を破って外の世界へと足を踏み出さないといけない。
自分自身と、周りと、向き合うこと。
それは自分以外の人間には決してできないことで、自分がいつかやらなきゃいけないことだから。