その日はまだ梅雨前だっていうのに、外は酷い雨で憂鬱だな、なんて。そんなことを思ったのを覚えてる。



「じゃあ、相馬。お前でうちのクラスは最後で─── って、お前、なんで一人なんだ」



三者面談用に用意された教室。


挨拶もそこそこに、すでに所定の位置に座っていた担任の前まで歩を進めた俺は、一人、堂々と椅子に腰を降ろした。


だけど、そんな俺を見た担任は、笑えるくらい呆気に取られた表情で固まっていて。



「父は、仕事で来れませんでした」



2年の時の三者面談は、これでなんとか言い逃れできた。


今回の三者面談だって、本当はすっぽかすことも出来たのだけれど、どうせ後で捕まるなら、この言い訳で乗り切れれば儲けもの……と、思ったんだけど。



「お前……2年の時もそう言って、親父さん来なかったじゃないか。スケジュールも、無理なら都合のいい日を連絡するように言ったろ。さてはお前……親父さんに、三者面談の連絡してないんだろ」



今回ばかりは、さすがにそんな誤魔化しも通用しないらしい。


それも、そうか。

たった一度も三者面談をせずに、「はい、これで決定」なんて言えるほど、担任は俺の進路に責任なんか持ってくれない。


俺以外にも多くの生徒を抱えている先生が、俺という人間の将来に責任を持ってくれるはずがないのだ。