「……し、おり?」

「……っ、」



机を思いっきり叩いたせいで、手の平がジンジンと熱い。


身体中の血液が沸騰したように熱くなって、鼻の奥がツンと痛んだ。


目にもジワジワと涙の膜が張っていくのがわかって、私は瞬きを繰り返してそれを必死に堪えた。


熱が引けば、手にはひりつく様な痛みだけが残って、それを握り潰すように再び拳を握ると、私はそのまま蓮司を睨みつけた。



「(……っ、樹生先輩は、そんな人じゃないっ!!!)」



─── ああ、どうして。



「(先輩は……っ、いつだって優しくて、私の気持ちを先回りしながら考えてくれていてっ。その先輩が、そんな人じゃないことくらい、私がよくわかってる!!!)」



どうして。



「(どうして会った事もない、話した事もない蓮司が、そんな風に先輩のことを悪く言うの!?)」



声がでない、

声がでない、

─── 声が、でない。



「(樹生先輩のこと、何も知らないくせに、わかったようなこと言わないで……っ!!!)」






こんな時でさえ、私の言葉は音を奏でてくれない。