……でも、それだけで、よかった。


それだけで十分で、私はそれ以上を望んでいない。


朝のあの、幸せで温かい先輩との時間は2人だけの秘密の時間で、今の私にとっては掛け替えのない大切な時間。


だからこそ、どうしてそれが知れただけで、蓮司にこんな風に苛立ちを抱かせるんだろう。


蓮司に先輩とのことを言ったらしいその人も、何を思って蓮司にそれを伝えたのかもわからない。


大体にして、それでどうしてこんな風にアユちゃんが怒鳴られなきゃいけないの?


絶対絶対、おかしいよ。


どうして、こんな風に───



「栞っ!!黙ってねぇで、なんでそいつと毎朝一緒にいるのか言えよ……!!」



先輩が、“そいつ”なんて言われなきゃいけない。