だけど、声にならない声の先。
いつも樹生先輩が立つホームとは向かいのホームにいる先輩に、思わず絶望で立ち尽くす。
(どうして……っ。だって、先輩はいつもこっちのホームに立っていて、それで、一緒に学校へ行っていたから、今だってこっちのホームにいると思って、なんで……っ)
樹生先輩が今住んでいるという家が、私が勝手に思い込んでいた方向に向かう電車とは、違ったのだろう。
冷静に考えれば、学校へと向かう電車の来るホームというだけで、先輩がこちらに立っているなんて確証はなかったのに。
私は我を忘れて、ただホームに来れば樹生先輩に会えると思って、選択を間違えたのだ。
ただでさえ、出ない声。
丁度、帰宅ラッシュを迎える駅のホームで向かいのホームにいる先輩が、私に気付くはずもない。
(なんで……っ。どうして、こんな時に限って……っ)
慌てて携帯電話を取り出してみるも、【充電切れ】の文字に、つくづく運の無い自分を呪った。
「(先輩……っ、樹生先輩……っ!!)」
お願い、気付いて、行かないで……っ!!
そう心の中で叫んだと同時、向かいのホームに電車が滑り込んでくることを告げる最後のアナウンスが響く。
そのあまりに無情な状況に、ああ、今度こそこれで終わりだ、先輩には私の声は届かないのだと諦めかけた、瞬間───