……先輩。樹生、先輩。


見慣れた綺麗な筆跡と、どこか控え目に綴られたその文字に、いつか先輩に言われた言葉を思い出す。



“文字って、感情を伝えることも出来るんだね”



あの時、そう言って微笑んだ先輩は、続けてこう言った。



“例えば、不安な時は少し文字が小さくなる”



その、生徒手帳に書かれた、遠慮がちな文字。


いつもよりも幾分小さく書かれたその文字に─── 先輩がこれをここに綴った時の感情が溢れていて、涙の雫が頬を伝って手帳に落ちた。



“言葉を声にしなくても、大切な気持ちは伝えられるんだ……って。改めて、知ることが出来た”



ねぇ、先輩。本当に、先輩の言うとおりです。


例え声に出せなくたって。

伝えられる愛のカタチが─── ここにはあった。