「(これ……、)」
それは間違いなく、私の生徒手帳。
ついさっき、図書館でも手に持って拡げた生徒手帳だ。
けれどその時に見たそれとは違って─── ある、小さな変化が見える。
元々、自分が失声症であることを書き記して付けたドッグイヤー。
それだけではない。それともう一つ、覚えのないドッグイヤーが、その手帳にはされていたのだ。
「(なん、で……?)」
息を飲み、高鳴る心臓に急かされながらも震える手でゆっくりと、その見覚えのないドッグイヤーに指を掛けた。
そうして、ゆっくりと。開けてはいけない扉を開くように、恐る恐るそのページを開けば───
「……っ、」
そこに書かれた “ 声 ” に、私は思わず喉を鳴らして自分の口元を両手で覆った。