「〜……っ、っ、」
苦しくて、苦しくて、苦しくて。
今ある現実を飲み込むのに必死だった。
先輩にサヨナラを告げること。それが私にできる唯一の恩返しのはずだったのに、心は輝きの全てを失ってしまったかのように晴れてはくれない。
強くなりたい、強くなれるはずだと、今日まで何度も自分に言い聞かせたけれど、今更になって自分の弱さに打ちのめされた。
このままじゃ、ダメ。
先輩に出会って、この世界にはたくさんの優しさと、かけがえのない温かさがあることを教えてもらったのに、今このまま悲しみに押し潰されたら全てが無駄になってしまう。
苦しくても、悲しくても。
私は、前を向いて歩いていかなきゃいけない。
先輩がそばにいなくても、先輩が気付かせてくれた、たくさんの優しさを抱えて歩いていかなきゃいけないんだ。
「……っ、」
そうして、ゆっくりと顔を上げた先。
不意に動かした視線の先に “あるもの” が飛び込んできて、私は誘われるように、それにそっと手を伸ばした。