「それ以上の言葉は……必要ない」
「(……せん、ぱい?)」
「推薦で受けるはずだった大学よりも、俺はこっちの大学に合格出来たことを嬉しく思ってるから。あの時ああなって、結果論だけど、こうして視野を広げる機会をくれた栞に、今の俺は感謝してる」
「……っ、」
「だから、ありがとう。俺に、“挑む”機会をくれて。そして、それを乗り越える力をくれて本当にありがとう」
「っ、」
─── 今度こそ。
今度こそ本当に、声を上げて泣きたくなって、そんな私を抱き留めるかのように、先輩は私の後頭部に手を廻すと力強く自分の胸へと引き寄せた。
「……っっ、」
そのまま抗うこともせず、樹生先輩の着ているジャケットを掴んで額を胸に押し付ける。
この3ヶ月で枯れてしまったはずの涙が次から次へと溢れ出し、あっという間に先輩シャツを濡らしていった。