「受験の当日も持って行って、ずっと、ここ。制服の胸ポケットに入れて、勇気を貰ってた」


「……っ、」


「ちなみに、お守りを記してた、誰かと同じ名前のシオリも参考書とかに挟んで使ってたし、今も手帳に大切に挟んであるよ」



「お礼を言うのが遅くなって、ごめん」と。消え入るような声でそう言った先輩の言葉と同時、嬉しさと安堵で再び涙が溢れ出した。


先輩の笑顔がみるみる内に滲んでいって、今度は堪える間もなく大粒の涙の雫が次から次へと頬を伝って零れ落ちる。


3ヶ月前のあの日。

あの日の私の気持ちは、確かに先輩に届いていたんだ。


樹生先輩に、届いていたんだ。



「(せ、先輩……っ、おめでとう、ございます……っ。本当に……っ、おめでとうございます……っ。私……っ、私、先輩にずっと謝りたくて……っ、私のせいで先輩の大学の推薦もダメになってしまって、それで、私─── っ!)」



“迷惑を掛けてしまって、本当にごめんなさい”、と。


子供のように泣きながら、声にならない言葉を紡ぐ私の唇に、突然先輩の綺麗な人差し指が静かに添えられ弾けるように顔を上げた。


すると視線の先の樹生先輩は、私が言おうとしていたその先の言葉を紡ぐことを許さないと、私を見て小さく首を横に振る。