声にならない言葉を、ただひたすらに先輩の背中へと投げ掛ければ、また一つ、胸に小さな花が咲く。
けれど、そんな私の手を引く先輩は何かを話す様子もなく、ただただ無言で駅までの道程を歩いていった。
(先輩……?)
先輩のその様子に不安が募るのは、私の中の“期待”という欠片が、もう何度砕けたかわからないから。
そうして、あっという間に駅まで着いてしまうと、そんな私の不安を肯定するかのように、繋いでいた手が意図も簡単に解かれた。
3月の終わり、まだまだ風は冷たくて、不意に走った寒さが離れた掌を切なく撫でる。
「……栞に、どうしても報告したいことがあって。それで今日は、図書館まで栞を探しに行ったんだ」
「(……え?)」
「栞には、どうしても一番に伝えたくて。だから……」
けれど、そんな切なさに浸る余裕もなく。
突然口を開いた先輩は静かに私の方へと振り返ると、再び柔らかに笑ってからゆっくりと、言葉を紡ぎ始めた。