夢のような現実の中で、先輩に手を引かれるがまま図書館を出ると、世界は鮮やかなオレンジ色に包まれていた。


何故だかそれだけでまた胸が苦しくなって、涙が零れそうになる。


先輩は、どうして突然私の前に現れたのだろう。


今更になって、どうして。


一歩前を歩く先輩の背中を見ながら、答えの見つからない問いを、ひたすらに自分に投げ掛けた。


図書館から駅までの道程。


何度も先輩と歩いたその道を2人でゆっくりと歩けば、再び先輩との思い出に胸が埋め尽くされて、切なさで息もできない。


蝉の鳴き声がウルサイと眉を顰めた先輩、夏は嫌いだと溜め息を零した先輩、いざ夏が終わりを見せるとちょっと寂しいなんて呟いた先輩。


ねぇ、先輩。

先輩との何気ない日々はどれも色褪せることなく、今でも私の心を染めたままなんです。


樹生先輩は今でもずっと、私の心を色鮮やかに染めているんです。