突然名前を呼ばれて、弾けるように顔を上げた先。


するとそこには、今朝の彼─── 痴漢と転倒から助けてくれた酷く綺麗な顔をした彼が立っていて、私は思わず息を詰まらせた。



(な、なんで……)


「意外に、会えるもんだね。もっと、何時間も待ってなきゃいけないのかなーって、思ってたけど」



そう言うと、壁に預けていた身体を持ち上げ、優しい笑みを浮かべながら私の方へと歩み寄ってくる。



「運が良かったのかな。……すぐ、会えた」


(な、何……?これって、どういう……?というか、なんでこの人が私の名前……)



だけど、そんな彼とは裏腹に、私の頭の中は大混乱だった。


だって、どうして彼が今、目の前にいるのか。そして、どうして私の名前を知っているのか。


挙句の果てには、今の言い方だとまるで私を待っていたみたいで、どうして、そんな……