「……なんか、その顧問も相馬先輩とはあんまり面識もないんだけど、でも、先生同士の間でも噂になってるくらい、先輩、死ぬほど勉強してるらしくて。合格する確率は、それでも五分五分だろうなーって顧問は話してたけど……」
だけど、そんなことは問題ではなくて。
先輩と会えなくなるかもしれないなんて、そんなレベルの低い話をしている場合じゃないんだ。
人前で自分の努力を見せることを嫌う先輩が、人目を憚らずに必死に勉強している。
そもそも知識の乏しい私でも、医学部を受験すると聞いただけでも大変なんだろうなということだけは想像できるように。
浪人するのも当たり前と言われる医学部受験に挑むには、一体どれだけの努力が必要なのだろう。
私は先輩のことだから、きっとアッサリ合格してしまうんだろうな……なんて、安易に考えてしまったけれど、そんなはずないんだ。
先輩だって例外なく、針の穴に糸を通すような道に立っていることに違いないんだから。