─── 先輩。
蓮司の口から出たその名前に、反射的に表情を強ばらせ、一瞬息の仕方を忘れてしまった。
というのも、先輩と会わなくなって、もう1ヶ月半と少し。
最近では、アユちゃんと蓮司も気を遣ってか、私の前で先輩の話をすることもなかった。
だから、久しぶりに蓮司の口から聞いた名前に、心臓が早鐘を打つように高鳴って。
たったそれだけで、私はまだまだ先輩のことを諦められずにいるのだと思い知る。
「今日は、ずっと、話さなきゃって思ってて……でも、栞も前を向こうとしてるのに、また余計なことして足を引っ張ったら……と思ったら、結局言うタイミングなくて……」
その言葉の通り、蓮司は蓮司なりに、ずっと、あの日のことを後悔していた。
自分が樹生先輩に会いに行きさえしなければ、こんなことにはならなかったんじゃないか、って。
先輩の大学の推薦が取り消されて、私と先輩が今みたいな状況に陥ることはなかったんじゃないか……って、蓮司は自分を責め続けてる。