「栞(しおり)、忘れ物なぁいー?」



玄関で靴を履いていた私の後ろから、お母さんのそんな声が飛ぶ。


うちのお母さんはとても心配性で、私はもう高校生だっていうのに、私に対して未だ小学生みたいな、そんな扱いが抜けない。


と、いってもお母さんがそんな風に心配してしまうのも仕方がないことなのかもしれないけれど。


ローファーを履き終わり後ろを振り向けば、リビングからひょっこりと顔を出すお母さんが見えた。



「気をつけていってきなさいね!」



そんなお母さんに向かって、“忘れ物ないよ”という意味と“行ってきます”の意味を込め右手を挙げると、私は笑顔で玄関の扉を開けた。