最後の言葉はどこか誇らしげに言って、広げていた両手をパーカーのポケットへとしまったタマさん。
ぼんやりと、そのタマさんの姿が滲んで見えなくなっていくのを感じて、私は思わず唇を噛み締めた。
そんな私の様子を知ってか知らずか、一度だけ大きく伸びをしたタマさんが、再びアキさんへと声を張り上げる。
「アッキー!やっぱ、今日の予定変更!こないだ買った新作ゲーム、ウチで一緒にやろうぜ!」
「は……はぁ!?し、新作ゲームって、こんな時に何言って─── って。あ……ああ、うん。そうだな、そうしよ!」
「よーし!そうと決まればダッシュで帰ろうぜ!ウチまで競争な!負けた方が、ゲームをより楽しむ為のお菓子買うな!」
「は……はぁ!?ヤダよ競争とか、ちょっとタマ、待……っ」
「っ、」
ポンッ!と。
去り際に、ニッ、と太陽みたいな笑顔を見せて私の肩に手を乗せたタマさんは、あの日─── お祭りでアキさんが私に言った言葉と同じ言葉を呟いて。
“……樹生のこと、よろしく”
その言葉に、溢れそうになった涙を必死に拭った私は再び顔を上げた。
そうして立ち止まっていた足に再び力を込めて、今度は樹生先輩のいるであろう─── 樹生先輩の家に向かって全力で走り出した。