「誰それ、でもなんかどっかで聞いたことある名前」、と。
続けて間の抜けた声を出したタマさんとは裏腹に、驚いた表情のまま私を見つめるアキさん。
そんなアキさんを見て、ようやく樹生先輩に会えるかもしれないという安堵感から胸を撫で下ろした私は、タマさんにお礼をすることも忘れてアキさんの元へと駆け寄った。
「(あ、あの!今、樹生先輩のとこに行くって言ってましたよね!?それって、どういうことですか!?樹生先輩は帰ってしまって、もう学校にはいないんですか!?)」
「え、えーと……?ごめん……」
「(あ……っ!す、すみませんっ)」
早口で口を動かした私に戸惑いの表情を見せるアキさんに、慌てて携帯を取り出した私は文章を綴ると画面をアキさんへと向けた。
【樹生先輩に、会いたくて来ました。先輩は今、どこにいるんですか?】
「っ、」
けれど、その文章を一度だけ視線でなぞると携帯から私へ視線を戻し、何故か眉尻を下げたアキさん。
その表情の変化に、胸いっぱいに不穏が広がった。
樹生先輩は、あの後どうなったの?
一体、何があったの?
学校にいないなら、先輩は今どこに───