(……ドッグイヤー?)



生徒手帳には珍しく、なんだか使い込んでいる感のあるカバー。


その1ページに、不自然なドッグイヤー……折り目が、つけられていたのだ。


心の中で申し訳ないとは思いつつも、気が付けば、好奇心からその折り目に指をかけていたのは男子の性(さが)と思って許して欲しい。



「……え、」


「ん?なんだ、相馬(そうま)。質問か?」


「あ……いえ、なんでもありません」



だけど、そこに書いてあった言葉を見て思わず声を漏らしてしまった俺は、教師から隠すように慌ててその生徒手帳をポケットに戻した。



(……だから、あの時)



─── 思い出すのは、今朝のあの子の不自然な態度。


最後に渡された言葉、ともなるあの子の行動の意味を、俺は今更ながらに理解した。



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 『Iris(アイリス)』

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