蓮司の口から紡がれる言葉の全てが信じられなくて、信じたくなくて、話を聞きながら、どうかこれが夢であってほしいと何度も願った。


こんな風に思うのは、お父さんのあの事故以来。


私の心はあの日のように現実を受け入れることを拒絶する。


けれど、いつもは男の子特有の凛々しさと逞しさを携えている蓮司の酷く狼狽えた様子が、今聞かされた話の全てが真実なのだと私に告げていた。



「俺はっ、そうなった事情を先生に説明しようとしたんだけど、あいつ……相馬先輩が、絶対に言うなって耳打ちしてきて……っ。先生に話したら事が大きくなって、また栞が傷付くことになるかもしれないから、って……」


「(そんな……)」


「ほ、本当は……その時、栞にも言うなって言われたんだけど、でも、黙ってるわけにはいかねぇよ……っ。俺……まさか、こんな事になるなんて……」


「それで……っ、樹生先輩はどうなったのよ!?」


「犯人だった先輩と一緒に先生に連れてかれて、でも俺は他校生ってことで帰された……。だから、その後どうなったかは全くわかんねぇ……っ」