気が付いたら、身体が勝手に動いていた。


─── “心ない言葉を平気で言える人間は確かにいる”


怒りで真っ黒に染まった思考の片隅で、ほんの数十分前、栞にそう言ったその言葉を思い出した。


俺は栞に出会って、言葉の尊さと言葉の持つ優しさを知った。


栞は、知っているだろうか。


言葉は口にした瞬間、言霊という名の目には見えない不思議な力を持つらしい。


口にした言葉には見えない力が宿って、その言葉を現実に起こり得る出来事にしてしまうってこと。


そんな非現実的なこと……今までの自分なら、少しも信じなかっただろう。


だけど、今になって思うんだ。


栞に出会ってから、その見えない力はいつだって俺に、たくさんの感情と原動力を与えてくれた。


いつだって、栞の優しい言葉が俺の背中を押してくれたんだ。