「……あ、おいっ!!」


「っ、」



駆け出した足は真っ直ぐに、グラウンドを横切り部活動をする生徒たちのために建てられた部室棟へと急いだ。


そこで賑いを見せる後輩たちの中、一人、偉そうに足を組んでベンチに座る、場違いな様子の男を見つける。


そして、俺に気づくこともなく呑気にその男が紡いだ言葉に、俺の中に色付いた疑念が確信へと染まった。



「ほら、例のあの声が出ない女の噂─── 俺もさぁ、その女の子と仲良い後輩から聞いた話で結構詳しいから、なんでも聞いてよ。っていうか、初めに噂を流したTwitterの奴、いよいよヒーローじゃね?」


「せ、先輩……?」



だけどそれは、幼馴染みくんも同様だったようで、背後から呟かれたその声は、酷く震えていて。



「父親が人殺しとか、マジないよなぁ〜。普通に気持ち悪くね?」



─── ふざけるな。


気が付けば俺はそいつの前に立ち、誇らしげな表情を浮かべるそいつの胸倉を掴み上げていた。