「……俺、ガキの頃、栞のことが好きでした。でも、中学入ってあの噂のせいで栞が周りからハブられたり、悪く言われたりしてるのを見て、なんていうか今度は好きとか以前に守らなきゃ……って思いが強くなって。それは今でもそうで、だから俺にとって栞はなんていうか妹みたいな、そういう感覚で……」
バツが悪そうに、けれど懺悔するかのように紡がれるその言葉に、不思議と嫌悪は感じられない。
「それで、俺……。栞に初めて、あんたのことを話した時。あんたのことを悪く言う俺を、栞はキッパリと否定して。その潔さに、ああ、もう、栞は俺以外に自分を守ってくれる存在を見つけたんだ……って、そう思ったら……なんか、すげぇムカついて……」
「……で?噂を流した?」
「ち、違う……っ!!俺は、ただ……そういう自分の気持ちを、ある先輩に相談しただけで……」
「……ある先輩?」
「そ、その人……俺の中学の時のサッカー部の先輩で、今はあんたと同じここの高校に通ってて……実は、あんたの噂もその先輩から聞いて知ったんです……」
「……、」
「お前の幼馴染が、相馬 樹生に弄ばれてる。早く引き離さないと、栞ちゃんが痛い目に遭うぞ……って」