彼の声色と様子に、それが俺を引き止める為の嘘ではないということはわかった。
そして─── そう言う彼が、何かに怯えているということも。
「……誰だよ」
「っ、」
「知ってること、全部言え」
自分でも、驚くほど温度のない声が出た。
けれど抑えきれない気持ちに蓋をする余裕もなく、俺は掴まれた腕を振り払って彼へと身体を向けると、戸惑いを滲ませたその目を真っ直ぐに見つめた。
そんな俺の様子に一瞬怯んだ彼だったけれど、彼もまた意を決したように一度だけ喉を鳴らすと、今度はゆっくりと、言葉を紡ぎ始める。
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