「……あいつは、大丈夫でしたか?」
「それは、どうだろう。今すぐ追いかけて行って、自分の目で確かめてみたら?」
今度は意地悪半分でそう言うと、それを合図に視線を外して足を動かし、目の前の彼をその場に置き去ろうとした─── の、だけれど。
「っ、あいつはっ。栞は、あんたのこと、信用しきってます!!」
通りすぎようとした俺の腕を痛いくらいの力で掴んだ彼によって、それは叶わなかった。
放たれた言葉の重さと腕を掴む力強さに、再び視線を彼へと向ける。
そうすれば、俺を真っ直ぐに射抜くその目の強さに、俺は今度こそその場に足の根を張った。