「……俺は、あんたのことが嫌いです」
「うん、それは良くわかるよ」
開口一番、何を言われるかと思えば。
けれどそれに、笑みを貼り付けたまま返事を返せば「そういう余裕ぶったところは、大嫌いです」とまで言われる。
「それで?今日はその嫌いな奴に、何の用かな?栞なら、ついさっき駅で別れたばかりだけど」
「っ、あいつ、学校に……?」
「みたいだね。俺は、もうちょっと休んでてもいいと思ったけど、栞は……どこまでも真っ直ぐで、不器用な子だから」
言いながら今朝の栞のどこかスッキリとした表情を思い起こし、今度は自然と笑みが零れた。
栞は俺が思っている以上に強くて、芯の強い子だ。
その分傷付きやすくもあり、ほんの少しの歪(ひずみ)で壊れてしまうような脆さと儚さを併せ持った子。
まぁ、だから余計に目が離せないんだけど。