【私の父は、仕事中に取り返しのつかない事故を起こしました。その事故では多くの方が亡くなられました。それは全て事実です】
【でも……これだけは、父の名誉のために言わせてください。父は、わざと事故を起こしたわけじゃない。父は、自分の仕事に関わる全ての人を愛し、何より自分の仕事に誇りを持っていました】
震える指先が、白く染められていく。
書いては消して、書いては消して。
まだ書いたばかりの文字が消えたあとの残る黒板に、私は背を向けたままのクラスメイトたちの表情を振り返る勇気もなく、それでも必死に言葉を綴り続けた。
【私のことを受け入れてほしいなんて言いません。ただ、この教室にいさせてほしい、それだけです。そして、私の周りにいる大切な人のことだけは、どうか傷付けないでほしい。彼らは、ただ私の側にいてくれて、私に笑顔をくれただけなんです】
書いてから、斜め後ろに立つアユちゃんへと笑顔を向ければ「栞……」と、静かに呟いたアユちゃんの瞳から、綺麗な涙の雫が零れ落ちた。
いつだって守ってくれて、ありがとう。
だけどこれからは、私も守れるように強くなるよ。
そしたら今度は堂々と、あなたは私の大切な親友だと、胸を張って言えるから。