「─── 、」



扉の前に立ち、一歩教室内へと入ると、私に気付いたクラスメイトたちが一同に動きを止めた。


それぞれが私を見て、目を見開き驚いた表情を携えている。



「し、栞!?」


「(アユちゃん……)」



空気の変わった教室で、私を見つけて一番に駆け寄ってきてくれたのはアユちゃんだった。



「栞っ、来るなら来るって言ってくれたら、家まで迎えに行ったのに!っていうか、まさか図書委員の仕事してきたの!?どんだけ真面目よ!!」


「(アユちゃん、ごめんね……たくさん心配してくれて、守ってくれて、ありがとう)」



口の動きだけでそう伝えると、「……なにそれ。全然わかんない」なんて。


本当はわかってくれたはずなのに、照れ隠しでそう言ったアユちゃんが私から顔を逸らした。


そんな、アユちゃんの変わらぬ様子と態度に再び勇気を貰う。


そうしてぐるり、一度だけ教室内を見渡した私は、バツが悪そうに私を見ていたクラスメイト達へと深々と頭を下げた。