言いながら、再び先輩を見つめれば、柔らかに細められた目。


不意にトン、と額を指先で突かれ、思わず目を見開けば、そんな私を見て先輩が小さく笑った。



「……それは、お互い様」


「(え?)」


「栞も無理しないように、ってこと」


「っ、」


「今日も、学校で何かあったらすぐに報告すること。あと、わかってると思うけど帰りはそっちの学校まで迎えに行くから、帰り時間がわかったら連絡して」


「(で……でも、そんなことしたら、先輩は受験で大変なのに……っ)」


「大切なものって手元に置いておかないと、逆に不安で色んな事が手に付かなくなることってない?それと同じだから」


「……っ、」


「ってことで、連絡は必ずするように。約束」



その言葉にそれ以上の異論はさせないとばかりにタイミング良く、駅へと滑り込んだ電車。


立ち上がった先輩を慌てて追い掛ければ、私を見て意地悪に笑った先輩に胸がキュンと高鳴った。



「じゃあ、また放課後に」



そう言うと改札を抜け、片手を上げて踵を返す先輩。


けれどこの時、反対の出口へと歩いて行くその後ろ姿を見つめながら、何故だが胸騒ぎがしたのはきっと、私の気のせいではなかった。