「(……先輩は、大丈夫ですか?)」
電車に乗り、いつもとは違った乗客の風景を視界に捉えながら、隣に座る先輩へと言葉を向けた。
今日も相変わらず完璧な容姿の先輩が、なんとなく疲れているように見えるのは多分、私の勘違いではない。
眉目秀麗な先輩の横顔をジッ、と見つめれば、「栞、顔が怖くなってる」なんて。
先輩はいつだって私のことを気に掛けてはくれるけど、私からすれば今くらいは自分の事だけに集中して欲しいのが本音だということもわかってもらいたい。
「まぁ、とりあえず推薦で受験できるし、せっかくのチャンスだから頑張らないと、ね」
「(もう……すぐ、ですよね?)」
「うん。一応、11月の頭には願書出して、試験日が12月の頭。合格発表はその4日後。だから今日あたり、担任に提出書類のチェックとか頼む予定」
「(本当に、いよいよですね。でも……休む時は、ちゃんと休んで、無理だけはしないでくださいね?)」