そこまで言って静かに手を離せば、さすがの先輩も口の動きだけでは全てを汲み取れなかったのか、難しそうな顔をして私を見つめた。


そんな先輩を前に再び笑みを見せると、私は携帯電話を取り出して指を這わせる。



「（恥ずかしいので、２回は言えません。だから、内緒です）」


「え、」


「（忘れてください。でも、出来れば忘れないでください）」



なんて。自分でも呆れるほど理不尽で理解不能な言葉。


それでも再び先輩を見上げれば、そんな私を見て先輩もまた、呆れたような笑みを零した。


だけど、その全てが私の本心で、それだけが今の私の全てだった。