そんな樹生先輩の横顔と言葉に高鳴る鼓動。
私はそれを宥めるように息を吐き、意を決して先輩の体温の低い手をそっと掴んだ。
「……栞?」
「(……先輩は、)」
先輩は。
やっぱり、どこまでも優しい人だ。
私のために何もできていない、なんて。
そんなはずない。そんなわけがないのに。
だって私は、先輩にたくさんの優しさをもらってる。
私が今日こうして、学校に行こうと思えたのも先輩のお陰だ。
あの時、凍えきっていた私の心を先輩が温めてくれたから、私は逃げずにいられたの。
我慢しなくていい、俺が全部受け止めるから……と。その言葉に、私がどれだけ救われたのか、先輩はわかっていない。
そして、そんな先輩の優しさに答えなきゃ、答えたいと思ったからこそ、私は今日ここに立っている。