「栞ならきっと、俺にこれ以上迷惑掛けたくないとかいうどうでもいい理由で、学校行く気になっても言わないだろうなと思って。だから、栞のお母さんに予め、栞が登校する時は朝一で連絡くださいって言っといたんだ」
「っ、」
「……迷惑なんて思うくらいなら、こんなに深く関わってないよ」
言いながら、「そこまで信用ないかな、俺」と、自嘲の笑みを零した先輩に何度も首を左右に振った。
そんな私を見て柔らかに微笑んだ先輩の手が、私の頭を優しく撫でる。
一週間ぶりの、変わらぬ温もりに思わず滲む視界。
朝からこんなところで泣くわけにはいかないから、誤魔化すように必死に瞬きを繰り返した。
そんな私の様子にもすぐに気付いてくれた先輩は、再び小さく笑みを零して、ホームに立つ他の乗客から私の身体を隠すように隣に立った。