先輩に過去の全てを話したあの日、先輩は私が泣き止むまでずっと、私の身体と心を抱き締めていてくれた。


降り続く雨は、どんなに身体と心を冷やそうとも止んでくれることはなく、いつの間にか自分ではどうすることもできないほどに凍え切っていて。


そんな私を先輩は、繋ぎ止めるように温め続けてくれたんだ。



「(……学校、行かなきゃ)」



雨の中、お母さんが心配するからと家まで送り届けてくれた先輩は「無理はしなくていいから。今は、休みたいだけ休んだ方がいい」と、最後まで優しさに濡れた言葉を私にくれた。


そんな先輩の言葉に甘えるように、一週間も学校を休んでしまった私は、いい加減このままではいけないと再び自分の心を奮い立たせた。



「あら、栞。具合はもういいの?」



制服を着て、リビングの扉を開けた私にお母さんの優しい声と笑顔が向けられる。


体調が悪いなんて私の嘘にもきっと気付いているお母さんは、わかった上で気付かないふりをしていてくれる。


そんなお母さんに向けて、「ありがとう」という気持ちを込めて精一杯の笑顔を見せると、私は前に進むべく扉を開けた。