栞の過去を知り、栞の声を奪った理由を知れば、何かが変わるんじゃないかと漠然と思っていた。


そんなことを安易に考え、一人で彼女のヒーローを気取っていた自分は、本当にただの馬鹿だった。


─── 栞の過去を聞かされたことで、俺は改めて自分の浅はかさと幼さを、思い知ったんだ。


あの時、俺から父親の話を聞かされた栞は、一体どんな気持ちだった?


どんな気持ちで俺の話を聞き、飲み込み、励ますための言葉をくれたのだろう。


どれだけ自分の想いを押し殺して、過去にしがみつく俺を救ってくれたんだろうか。



「(……ごめんなさい、先輩。嫌な話を聞かせてしまって。今日は助けてくれて、本当にありがとうございました)」



神様は、どうしてこんな風に意地悪をする。


どうして彼女一人に、こんなにも酷い罰を与えたのだろう?